遺言書活用のポイント
ここでは遺言書活用のポイントをご案内していきます。
遺言書の種類や書き方についてご説明をしてきましたが、遺言書がどのように有効であるかということが実感できない方も多いのではないでしょうか。ここでは事例をご紹介して遺言書の有効性を見ていきたいと思います。
遺言書によって叶えられる遺言者の意志
玲子さん(仮名)のは上に兄がおり2人兄妹でしたが玲子さんの幼い時に早苗さん(仮名)がご両親の養子になっており、兄妹3人となりました。
その後玲子さんが20代の時にお父様が亡くなり、先日お母様が亡くなられました。お母様がお住まいだった家は持ち家だったことと、預金が残っていたので(土地建物3,000万、預金2,000万程度)玲子さんは遺産相続が発生すると考えていました。
お母様の葬儀の後2週間が経ち、お母様と同居をして介護をしていた早苗さんから「母の残した遺言書があり、遺言の執行を遺言執行者に指定されていた行政書士の方にお願いしました。」とのことでした。
玲子さんは遺言書の存在を知らされていませんでしたので驚いたと同時に遺産が絡むこともあり早苗さんに不信感を抱きました。
玲子さんが確認したところによるとお母様の遺言書は公正証書で作成されていました。内容はご実家の建物は早苗さんに、葬儀費用はお母様の預貯金から支払い、その残りの60%を早苗さんに、残りの40%を玲子さんと兄の2人で分けるようにとの指示でした。
遺言書の指示によって早苗さんはご実家の土地建物と1,150万を相続し、実の子である玲子さんとお兄さんが350万ずつのみ相続するという事になりました。早苗さんに対しては養子という事を感じさせるような扱いはしてきていませんでしたが実子である自分たちを差し置いて晩年介護をしていたという事で相続財産にこんなにも差が出てしまうという事に憤りの気持ちが沸き、専門家へ相談を決めました。
<相談の結果・・・>
専門家との相談の結果、子供として本来貰えるはずの遺留分の請求をするにも、調停をするにも最低50~100万円の費用がかかるという事が分かり、玲子さんはこれ以上事を荒立てて兄妹間に亀裂が入ることもお母様の望まれている事ではないと思い、遺言書に従う事に決めました。
早苗さんの立場に立ってみると、介護をしていた労に対するお母様の気持ちを尊重できたことや、遺産分割により実家を売却して財産を分けなければならない不安もなくなり一安心できたことでしょう。
上記の事例によって遺言書の持つ効力をご理解いただけたのではないでしょうか。
効力のある遺言書をスピーディーに作成する重要性
渉さん(仮名)は妻の死後も縁のあった義理の母、タケさん(仮名)の看病をしていました。ある日タケさんから呼ばれ病室へ行くと、6,000万円ほどの財産を渉さんに残すという内容の遺言書を渡されました。
タケさんの夫は既に亡くなっており、子供は2人いましたがそのうちの一人である渉さんの妻は既に亡くなっておりました。したがって法定相続人とされるのはタケさんの子供である渉さんの義理のお兄さんとなります。
しかし渉さんの義理のお兄さんは遠方に住んでおり、しばらく連絡を取っていなかったため最近は音信不通となっていました。タケさんは妻の死後も変わらず面倒を見てくれていた渉さんに大変感謝をしており、感謝の気持ちから前途のような遺言書を残したという事です。
渉さんは法律の事はわからなかったので念のためそのような遺言が可能なのか一度専門家に相談をしてみることにしました。専門家にタケさんの作成した遺言書を見てもらったところ、残念ながらその遺言書は法的な形式を満たしておらず、無効なものでした。専門家のアドバイスにより、公証人の先生を手配し、すぐに法的に確かな効力をもつ公正証書遺言書を作成されることを勧められました。
しかし、渉さんは義理のお兄様へ確認をとってからタケさんに遺言書の作成を提案しようと思い、義理のお兄様への連絡を試みました。ところがそんな最中タケさんの容体が急変してしまい、タケさんは亡くなってしまいました。
<結果・・・>
義理のお兄様はタケさんの葬儀にはやってきて自身の相続の権利を主張し、全財産を相続する流れとなりました。結果渉さんには1円の財産も分配されないとのことです。
専門家へ結果を報告する際に専門家から特別受益分の申立を行うことが出来るという話をききましたが、渉さんも既に高齢でそのような手続きに疲れてしまっていたこともあり諦めるとのことでした。タケさんの想いがわかっていながら実現できない結果となり大変残念な事例となってしまいました。
このように遺言書は正しい形式に沿ったものでないと無効となってしまったり、作成のタイミングを逃してしまうと遺言が残せないような事態になってしまいます。状況によってスピーディーな対応が求められるのです。
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